コンラート=ローレンツ著 日高敏隆+羽田節子訳. 1976. 行動は進化するか. 株式会社講談社, 東京.
古い本なので、なかなか見かけない。
せっかくなので、目次よりさらに下の階層の見出しまで紹介する。
まえがきとしての解説
行動が進化するかしないかの出発点
“学習”派--行動主義の考え方
“生得”派--エソロジストの考え方
生得的解発機構の概念
「生得的」と「学習」の論争点
遺伝子に組み込まれたものしかあらわれない
モノーのオペロン説--遺伝子を作動させるもの
人間につながる問題
1-はじめに
「生得的」という概念
2-「生得的」という概念に対する種々の理論的見解
アメリカの行動主義者と現代のエソロジストの見解
生得的概念を否定するアメリカ行動主義者の二つの論拠
行動とは系統発生的適応と適応的変化の混合であるとする仮説
ーー現代のエソロジストたち
本能=学習からみあい説
3-第一の行動主義的議論に対する批判
生物は環境に関する情報を取得している
種は環境に関する情報をゲノムの中に暗号化している
系統発生的に適応した行動解発メカニズム
学習は系統発生的適応と機能的に類似している
「学習」の命令的定義
学習は行動メカニズムの生存価を増大させる
生物は強化と消去に関する情報をどこから得るのか
生得的情報を含んだティーチング・メカニズムが学習を可能にする
情報獲得の二つのプロセス
系統発生的に獲得された情報に基づく行動メカニズム
4-第二の行動主義的議論に対する批判
ティーチング・メカニズムを忘れた前成説
議論の真実の部分
5-現代エソロジストの見解に対する批判
系統発生的適応と学習との相互浸透説には根拠がない
「適応」を無視した操作主義の不毛性
生物は適応の基礎となる情報をどこから得るのか
生得的情報の解読は個体発生によって行われる
解発機構に含まれる生得的情報量を正しく評価せよ
行動の因子
真の条件づけ
異なる発育条件下での特徴の類似こそ真に生得的である
適応的変化・調節装置そのものが遺伝的に設計されている
実験発生学の課題
学習にア・プリオリに存在するもの
解明のための二つのテーマ
プログラム以外の学習は系統発生的適応行動に介入しえない
1-学習の特異機能
ソープによる「慣れ」の定義
慣れの生存価機能
反応の低下に関する二つの可能性
慣れは否定的条件づけと同じではない
2-学習されたのではない、特異的刺激反応における選択性の増大
反応が刺激状況へ不可逆的に固着するプロセス
刷りこみ
条件づけとの相異
3-照準メカニズムの射程測定・コンピューターの調節・「体内時計」のセット
高度に分化したメカニズムに組みこまれた修正能力
照準メカニズムの射程
太陽による定位メカニズム
ツァイトゲーバーの働き
4-学習による運動パターンの機能的統合
充足的行為という生得的メカニズム
運動連鎖の統合に不可欠な学習
受容器パターンに含まれる学習の生存価機能
5-通路習性の形成
条件反応連鎖にもとづく道探し
定位メカニズムにおける記憶
灯台走性と空間的洞察
6-運動の学習
獲得された運動協調はどこまで条件づけの影響を受けるか
随意運動の生存価
「機能による快楽」と「完成強化メカニズム」の相関関係
運動の協調・熟練した運動・<遊び>
6-初期のエソロジストの態度に対する批判
行動主義者と同様の誤った対立的概念形成
学習を無視した、「生得的なもの」へのナイーブな態度
固定した運動パターンないし遺伝的協調
7-剥奪実験の価値と限界
剥奪実験の意義と目的
1-剥奪実験の第一の規則
実験は「学習されたのでないもの」についてしか断言できない
ティーチング・メカニズムへの示唆
2-剥奪実験の第二の規則
実験対象の全エソグラムを熟知しなければならない
不適当な成育法による典型的障害
3-剥奪実験の第三の規則
解発メカニズムを実験するさいの一回性
急速な条件づけの可能性を見落す危険性
4-剥奪実験の第四の規則
実験条件ははたして正常か
5-剥奪実験の第五の規則
同一の遺伝的素質をもつ実験対象を使わなければならない
8-要約
アメリカ心理学者の態度
英語国のエソロジストの態度
初期のエソロジストの態度
排除による二分法についての批判
早期学習の仮定に対する批判
英語国のエソロジストの学説に対する批判
初期のエソロジストの学説に対する批判
剥奪実験
参考文献
人名・事項索引
行動がどうやって遺伝したり進化したりするのか、昔から不思議に思っていたテーマ。
生得的なものと学習によるものの対立という考え方はもう古い、と長谷川真理子の本にもあった。